選んだ音キーワードは「通りを走る車の音」、物キーワードは「マグカップ」
①その日はなんだか仕事にいまひとつ集中できていなかった。今日は注意散漫だな。そんな風に言うと普段はすっかり集中している前提になってしまうが、実際はその逆で、一日がはじまってその日が終わるまでひとつの方向性を保ったままなんていうのはめったにない・・・正直1、2時間でも集中できたとしたらわりと良い方じゃないだろうか?だとしたら今日も注意散漫と言うべきなんだろうか・・・いや普段どおりだったら特に気にする必要もないのだから、さっさと仕事にとりかからないと・・・。とにかくそんな調子でちょっとぬかるんだ時間にはまりかかっていたわたしの注意がふいに外へ向いた。
②急な坂を一生懸命登って来る車の音が聞こえた気がしたのだ。大きく低い音はそれが乗用車ではないことも同時にわたしに感じさせていた。トラックだろうか。2t車くらいだろうか。アクセルを踏み込んで坂を登りきり、そこから小道をまがって近づいてくるのがわかる。道の凸凹にあわせてガチャガチャと重たい金属の音がする。間違いない。宅急便のトラックだ。少し金属的な音がしてサイドブレーキがかかる、アイドリングしたままドアが開く音と軽快に飛び降りる足音がして、間もなくトラック後方で金属がすれる音がして扉があけられる。何かネットで買ったっけ?と考えていると、小走りに砂利を踏む音とともに「お届け物です〜」といつもの具合で配達の方が庭先から声をかけてくる。「はいはいー。ご苦労さまでした。ありがとうございます。」ささっと適当なサインをして小さな荷物を受け取る。何だろう?送り主の欄には母の名前、品名は書籍・書類とある。そう言えば実家においてあった資料が必要になって送ってくれるように頼んだのだった。ありがとう。という思いには3分の1くらい「ラッキー」が混じっている。なぜか?
③時々そんな具合に実家からものを送ってもらうのだが、そういうときに母は頼んだもの以外に、隙間を埋めるためなのか、お気持ちなのか、何かしら「おまけ」を入れてくることがある。「おまけ」はだいたい菓子類が多く小さい羊羹だとか個包装のおかきだとか特別なものとかではなく、おそらく荷物をいれるときにテーブルにあったものと想像されるような類がほとんで、時々ちょうど貰った物だったり季節のものなどが入ることもある。わたしの「ラッキー」という思いは、ちょうどそういう類をきらしていて、注意散漫からの気分転換に甘いものでも、というわけにいかない状況であったためだ。包をひらいてみると案の定いくつかクッキーがはいっていた。頼んでいた資料が入っていることも一応確認し、体に気をつけるようにという一筆をテーブルにおいて、わたしはキッチンにむかいマグカップに手を伸ばした。
<参考までに。できた過程をちょっとだけ解説>
今回、選んだ2つのキーワードの「通りを走る車の音」というところから>宅急便にしよう>母が荷物にいれる「おまけ」のエピソードはおもしろいかも<じゃあ「おまけ」をお菓子にして<「マグカップ」とつなげよう。と言う感じで2つのキーワードの接点を見つけていきました。ちょっと長めにしてみようと①日常②ストーリーのきっかけとなる音③「おまけ」のエピソードみたいな感じの3展開する文章になりました。