国立国際美術館

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ちっちゃなこどもびじゅつあー

ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜

2023年4月12日(水)

4月12日に「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」を開催しました。

1日に3回実施し、生後5ヵ月から5歳までの子どもと保護者、計12組28名にご参加いただきました。「コレクション2 特集展示:メル・ボックナー」(以降、コレクション展)で3回目の開催となる今回のレポートでは、コンセプチュアル・アートに対する、ちいさな子どもたちの反応を中心にお伝えしたいと思います。(※1)

本展は、アメリカのコンセプチュアル・アートを代表するアメリカ人作家メル・ボックナーの《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)&プライマー》(1969-73年)を中心に、荒川修作、河原温、高松次郎等、日本人作家の作品を加え、コンセプチュアル・アートについて考える展覧会です。(※2)コンセプチュアル・アートと聞いて、美術館が好きという大人の方でもなかなか親しみにくいと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。開催前は、0歳~未就学の乳幼児とその保護者がこれらの作品を楽しむことができるのか、対話は生まれるのか等、若干の不安もありましたが、その心配をよそに参加者の多くはそれぞれのスタイルで作品を鑑賞していました。

本プログラムでは、展覧会場で作品を鑑賞する前のウォーミングアップとして、講堂で絵本よみと、これから鑑賞する作品画像をスクリーンに映し出して参加者と話しをするスライドトークを行います。今回も「美術と絵本を考える会」のみなさんが、作品に合わせて数や数えることをテーマに絵本を選書しました。『かずをかぞえる』(五味太郎/作、玉川大学出版部、2008年)の絵本よみでは、絵本の読み手と一緒に絵本に描かれている数を数えていました。このおかげか、スライドトークでスクリーンに《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)》(1969-72年)が登場すると、発話が始まっている子どもの多くは「石がある!」と最初にお話しし出しました。その後、自然に石の数を数える様子が見られました。

展示室での反応は様々で、まだお話しが始まっていない子どもは気になる作品の前で声を出したり、足を動かしたり、自分で歩くことのできる子どもはなんとか石に触れようと近づく姿が見られ、保護者からは「普段から石が好きで作品を見て触りたそうにしていた。公園で並べてみたいと思う」との感想が聞かれました。一方で、お話しをする子どもは、スタッフと一緒に石を数え、並び方の秘密を自分なりに見つけることを繰り返しながら達成感を覚えたのか、年齢的には難しいと思われる分数を用いた《セオリー・オブ・スカルプチャー(等しく不均衡)》(1972年)にチャレンジする姿も見られました。メル・ボックナー作品を楽しむ参加者がいる一方で、もちろん、日本人作家の作品が気になる参加者もいました。およそ1ヶ月前に同プログラムに参加した子どもは、前回はあまり話しませんでしたが、1ヶ月間での成長と2回目という場所への安心感か落ち着いて展示室で過ごすことができるようになっていました。今回は植松奎二《石、ロープ、人》(1974年)を見て、数点並ぶ写真同士を見比べ、そこに写し出されている様子の違いを「シュー」「ビヨーン」と言葉で表現しながら楽しんでいました。

こうして、コンセプチュアル・アートを楽しむ参加者もいれば、コレクション展の途中で「幼稚園で自分が作っているような作品(ティッシュの箱等を使った工作)が見たかった」とスタッフに話し、展示室から移動する子どももいました。地下1階ロビーで、マリノ・マリーニ《踊子》(1949年)を見たいと自ら作品を鑑賞し、スタッフから「これは工作かな?」と問われると、メル・ボックナー作品を思い出しながら「これは工作」と話してくれました。スライドトークなどで、《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)》(1969-72年)が、彫刻とはなにかを鑑賞者に問う作品でもあるということは、その回の参加者の様子を見つつ伝えることもありますが、その子どもは、自分にとって、どのような作品が彫刻(その子の言うところの工作)かということを、「工作が良かった」「工作だ」という発言により端的に述べていることに、スタッフ一同、驚きを感じました。

今回、紹介したコンセプチュアル・アートに対する子どもたちの反応は、プログラムの中でのほんの一部にすぎません。それぞれに反応を示しながらコンセプチュアル・アートを楽しむ姿から、「難しい」「難しそう」「わからない」と決めつけずに、作品と向き合うことの大切さをあらためて感じました。

ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました!今回のご参加を機に、また美術館に遊びに来ていただけたら嬉しいです。みなさまのご来館お待ちしています。[K.Y]

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2023年4月12日(水)1)10:30〜11:50 2)13:15〜14:35 3)15:00〜16:20
対象:0歳~未就学の乳幼児とその保護者
定員:5組10名
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