12月21日に「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」を開催しました。 「すべて未知の世界へ ― GUTAI 分化と統合」展では最後の開催となる今回は、1日に3回開催し、13組31名にご参加いただきました。1・2回目は、通常の流れでプログラムを実施し(※1)、3回目は大阪府「こめっこ」プロジェクトのご協力のもと、子どもの手話ことばの力を育む「こめっこ」による手話での絵本よみ、美術館体験を行いました。今回は、この3回目(以降、こめっこ回)を中心にレポートしていきます。 「NPOこめっこ」は、きこえない・きこえにくい子どもたちがご家族とともに“目でみてわかる”手話ということばに出会い、伝えられる・わかり合える体験を重ねながらコミュニケーションの芽を育んでほしいと、0歳から未就学のろう・難聴児が集まり、遊びをとおして手話を獲得・習得する活動をされています。0歳から未就学の乳幼児と保護者を対象としている本プログラムでは「こめっこ」をナヴィゲーターに迎え、きこえない・きこえにくい子たちにも美術館を楽しんでもらいたい、また美術館といういつもとは違う場所で手話ことばにふれてほしいとの思いから、年間3回程度こめっこ回(※2)を開催しています。今回はきこえにくい子、きこえる子とその保護者3組10名にご参加いただきました。 まず、講堂ではスタッフ紹介そして参加者のお名前呼びからスタートします。リズム遊びのような手拍子にあわせて、「こめっこ」スタッフが手話で参加者一人、一人のお名前を呼ぶと笑顔を浮かべる子、元気よく手をあげる子、恥ずかしがる子と反応はそれぞれですが、みなさん少しずつ輪の中に入っていきました。続いて、「こめっこ」スタッフによる手話での絵本よみでは、絵本に描かれている内容を手話で表現していきます。(日本語の音声通訳付きなので、きこえる子と保護者も一緒に楽しめます。)手話による絵本よみでは、物語が立体的に目の前で繰り広げられ、よみ手側の豊かな表現・表情も相まって、きこえる子もきこえない子も「こめっこ」の手話、手の動きに釘付けになっていました。 2冊の絵本よみを終え、展示室で作品を鑑賞する前のウォーミングアップとして、講堂の大きなスクリーンに作品を投影して鑑賞します。お名前呼び、絵本よみと楽しい時間を過ごした子たちは、緊張することもなく活発に目の前の作品の様子、感じたことを言葉にして作品を楽しむ準備をした後、美術館でのマナーをみんなで確認し、いよいよ展示室へ移動します。 今回から、参加者により多くの場面で手話に触れてもらおうと、白髪一雄《天雄星 豹子頭》(1959年)と元永定正《Nobi Nobi》(1971年)の前で、「こめっこ」によるミニギャラリートークを行いました。これまでの回では、自分で歩いて鑑賞する子どもは、展示室に入ると他の作品が気になり、ギャラリートークに参加するのは難しい子もいましたが、この回では一転、「こめっこ」スタッフによる手話での対話により参加者のみなさんは集中してギャラリートークに参加していました。元永定正《Nobi Nobi》の前では、「こめっこ」スタッフが「(作品を見て)僕は朝だと思うな。黄色だから、今からどんどん太陽が上がってきて明るくなる感じ。みんなはどうかな?」という投げかけを機に、作品からどんな感じがするか作品をじっと見つめている姿が印象的でした。「こめっこ」スタッフによる参加者に寄り添った対話によって、作品を楽しむ感覚をつかんだ参加者たちは最後の絵本よみの時間がなくなってしまうほど、じっくりと作品鑑賞を楽しんでいました。 講堂に戻ってからの振り返りでは、短い時間ながらも保護者からそれぞれの子が気に入っていた作品や、楽しむ様子を聞き、こめっこ回は終了しました。きこえる・きこえないにかかわらず美術館という場所を少しでも知り、いつもの場所とは違う手話ことばに触れる機会になっていたら嬉しいです。 ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました!今回のご参加を機に、また美術館に遊びに来てくれたら嬉しいです。ご来館お待ちしています。[K.Y] ※以前は、キッズルームでの絵本よみの後、展示室でギャラリートークを実施していました。2020年度より、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、講堂での絵本よみとスライドトーク、展示室での自由鑑賞という形式で進め、今回は同感染症対策緩和を受けて、展示室内でのミニギャラリートークも実施しました。 ※1 「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」(11月30日)の様子はこちらから ※2 こめっこ回についての詳細はこちらから --- 2022年12月21日(水) 1)10:30〜11:50 2)13:00〜14:20 3)15:30〜16:45(手話での絵本よみ) 対象:0歳~未就学の乳幼児とその保護者 定員:5組10名 ---