国立国際美術館

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島敦彦

国立国際美術館長  島 敦彦

 2025年度を迎え、大阪・関西万博が開幕する一方で、世界各地では今なお戦争や紛争が収まることなく、国家や民族間の対立や分断が深刻化しています。地震、水害、山火事などの災禍も頻発し、社会を支えてきたさまざまなインフラが機能不全に陥るなど、将来への不安がこれまで以上に増しているように感じられます。
 美術館の活動、ひいては美術家たちの制作においても、現代の危機的状況が影を落としています。前年度から引き続き6月1日まで開催した特別展「ノー・バウンダリーズ」展は、国家間のみならず、心理的、社会的、文化的なさまざまな境界をどう乗り越え、表現に結びつけるのかを提示するものでした。6月28日から10月5日まで開催の「非常の常」はさらに踏み込んで、非常事態が常態化している現状をどう打開していけるのか、もちろん答えを示すわけではなく、多様な表現や仕掛けの中にむしろ微かな希望を探し出す場として展開します。11月1日から2026年2月15日まで開催の「プラカードのために」は、九州の前衛作家・田部光子の言葉をタイトルに掲げたグループ展です。既存の価値観や制度、社会構造に問いを投げかけ、声なき声をすくいとると同時に、生きることと表現がどう結びつくのかを考えさせる作品群を紹介します。
 コレクション展は、近年収蔵した作品を含めた多彩な内容で、特別展と同時開催します。前年度から継続の「Undo, Redo 私は解く、やり直す」に始まり、「戦後美術の円・環」を特集する展示などを予定しています。どうぞご期待下さい。近年の収集では、欧米の現代美術に偏らないように、特にアジアの動向に着目すると同時に、女性作家の活動に焦点をあてて、ジェンダーバランスの是正を図っています。 
 教育普及事業については、コレクション展、特別展を活用して、工夫を凝らしたプログラムを開催していきます。また、親子連れの皆さまが他の来場者に気兼ねせずに鑑賞できるファミリー・デーを年に数回設定します。小さなお子さんが泣いてもぐずっても構わず、展示室で親子が自由に会話しながら作品を楽しめる、そんな時間を確保します。
 また当館の活動にともなって収集、蓄積された現代美術に関連する資料群を活用するための目録化にも取り組んでいます。そうした資料群については、当館のホームページ上で公開しています。
 国立国際美術館は、1970年の大阪万博の際にパビリオンの一つであった「万国博美術館」を前身として、建物を再利用して1977年に開館しました。いわば万博のレガシーを背負って、国際的な現代美術の拠点として活動してきたわけです。今後も、視野を広げながら、従来の考え方に縛られず、国内外の現代美術の魅力と面白さをご紹介していきたいと考えています。
 今年度も、国立国際美術館に是非足をお運びくださいますよう、心よりお願い申し上げます。

2025年6月

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