アングル展

会期:1981年6月23日~7月19日

ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル(1780−1867)は、新古典主義絵画の領袖として、ロマン主義絵画の旗手ドラクロワと共に、19世紀前半のフランス画壇を代表する巨匠である。しかし、日本ではその偉大な名声のみが伝えられることが多く、実際にアングルの作品が紹介される機会はほとんどなかったと言ってよい。彼の作品はフランス国内はもとより、欧米各国におけるアングルに対する評価が極めて高いこともあって、大半は、各国の主要美術館におさめられているだけでなく、そのコレクションの中でも重要な位置を与えられており、いわばどの美術館でも門外不出の扱いを受けている。従って、欧米においてもアングルの本格的な展覧会は、そう多く開かれてはいない。しかし、ルネサンス以来の古典主義絵画の正統を、テクニックの点でも様式の面でも継承しているアングルの作品は、西欧における油彩画の伝統の持つ厚みと重みをまざまざと語っており、明治以来100年余の歴史しか持ちあわせていない日本の洋画にとって、自らの展開を見つめ直すという意味からも、アングル展開催の意義は重要であり、その実現が待望されていたのである。本展は、そうした中にあって、日本で初めて開かれるアングル展ということもあり、1980年のアングル生誕200年を記念して昭和55年度に開催される予定で企画されたが、その後、本国フランス国内での展覧会スケジュールの都合もあって、本年度の開催となったものである。
アングルは、歴史や神話、宗教物語に取材した作品の他に、肖像や裸婦、風景と幅広い主題を87年の生涯を通じて描き続けた画家であるが、本展でも、初期の裸体習作から晩年の人物画まで彼の多彩な画業を示す油彩画24点が、ルーヴル美術館、プチ・パレ美術館、アングル美術館、ベルギーのリェージュ美術館、アメリカのコロンバス美術館などフランス内外の9美術館から出品された。アングルはまた、近代絵画の巨匠たちの中でもほとんどその右に出るものがいない程の卓抜したデッサンカの持ち主として知られているが、アングルの生まれ故郷モントーバンのアングル美術館からは、遺贈された4,000点以上のデッサン類の中から、水彩、デッサンの優品98点があわせて出品された。この他、同郷の彫刻家ブールデル作《アングルの胸像》、弟子のフランドラン作《アングルの肖像》とアロー作《ローマのアングルのアトリエ》の油彩画2点、アングルのデッサンに基づいて制作されたコラブーフ作のエッチング3点が参考作品として加えられ、本展は、4階、3階、2階を会場に、合計129点の作品で構成された。
有名な《泉》がルーヴル美術館から特別出品され、アングルの裸婦の魅力である典雅な官能美の一端に触れることができたが、アングル美術館から出品された《オシアンの夢》は、日本で紹介された油彩画としては最大級の大きさの作品で圧観であり、《ゴンス夫人》やリェージュ美術館の《第一執政官ナポレオン・ボナパルトの肖像》などの肖像画もアングル芸術の神髄を伝えていて見ごたえのある展観となった。また、自然の忠実な再現から始まって理想のフォルムに達するまで、ひとつのモチーフを相手に画家が執ように努力したことを物語るアングルのデッサンの数々は、油彩画として結晶している不思議な近代性の謎を解明する糸口のひとつとして興味深いものがあった。出品困難な状況の下で、限られた数の油彩画しか出品できなかったこともあって、デッサン類の展示にあたっては関連する本画を複製パネルで展示し、鑑賞の便宣を図った。
なお、本展は大阪展に先立って、4月28日から6月14日まで、国立西洋美術館で東京展が開催された。

  • 入場者:総数94,202人(1日平均3,925人)
  • 主催:国立国際美術館
  • 共催:国立西洋美術館/NHK
  • カタログ:「アングル展」
    24×22cm/224ページ/カラー32ページ/白黒71ページ
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